『アイデアの科学』
(SBクリエイティブ/1,080円(税込))

 なんとなく頭の中でイメージはあるけれど、相手に伝えられない。浮かんだアイデアを具体的に説明しようとすると消えてしまう。アイデアが形になったけれど相手を説得できる気がしない…。

 頭の中でイメージしたアイデアを表現したり、伝えたりすることは難しい。

 これは企画、デザイン、サービスなど、様々なアイデアを作る仕事をしたことがある人なら、誰もが一度は感じることであろう。自分の仕事とは関係がないという人でも、友人や家族を喜ばせるために旅行を計画する、イベントを考えるなど、アイデアを出す作業には、多くの人が共通の悩みを抱えている。そのため、世の中にはアイデアを作り、説明する方法を解説した本が複数ある。

 しかしそれらの本の多くは、企画の世界で活躍する成功者の方が、経験則を中心にまとめたものである。そこから多くのことは学べるが、一般の人がそのまま真似をしてできるものかどうかはわからない。科学的な根拠が不足していて、「なぜそうなるのか」が理解できず、半信半疑で進めなくてはいけないこともある。

●本書の特徴

 そこで本書は、おもに脳科学と心理学という科学的な視点で、アイデアを「作る」こと、よりよいものとして「魅せる」こと、そして相手にうまく「伝える」ことを目的としてまとめている。思考のメカニズムにそってアイデアを生み出し、目的に応じて人を動かす、心理テクニックを詰め込んだ。

 アイデア作りの初心者でも簡単に理解できるよう、専門的な話はできるだけかみ砕いて解説している。また中級者、上級者の方が読んでも新しい発見や深い知見が得られるようなテクニックも多く集めた。わかりやすくて簡単に読め、でも読み終わってみると深い知識と使える技が得られているはずだ。たとえば「この見せ方がよい」というところでやめずに「どうしてこの見せ方がよいのか」というところまでできるだけ踏み込んで書いている。

そこで本書では、おもに心理学と脳科学にもとづき、アイデアを作ってしっかり伝えるプロセスを「6段階アイデア思考法」としてまとめた。アイデアを出すために「寝る」「お酒を飲む」「お笑いを見る」などの意外で面白いヒント、思考の働きにそった最適な考え方等を論理的に解説している。「好運を誘発する方法」「プレゼンで戦う前に勝つ方法」などの秘技も公開。どれも経験則ではなく科学的な背景をもった論理的な方法である。

●この本を書く経緯

 本書の著者、ポーポー・ポロダクションは心理学の知見を使って、色々なものを作ったり、企業の商品、サービスを改善したり、アドバイスをする企画事務所である。様々な場所で、多くの人が、アイデアのことで困っている現場に立ち会ってきた。

 たとえばカーデザイナーを志す学生たちは、頭の中にとても斬新でおもしろい車のアイデアを持っているのだが、それをうまく表現する方法を知らずに苦しんでいた。テレビ局で視聴者を増やす支援業務をしている人たちは、今後ターゲットになる視聴者層を分析できていても、その層を引きつける表現方法を悩んでいた。またある開発メーカーでは素晴らしい商品の企画ができても、その素晴らしさをうまく社内で説明できずに困っていた。こうした現場をたくさん見て、アイデアを「作る」「魅せる」「伝える」ことが必要と考え、経験則で止まらず、もう一歩踏み込んだ本を作ることにした。

 成功者の方法を検証し、一般的に定説とされていることの根拠を探し、脳科学と心理学を結んだ。仮説を立てて立証していくなどの作業もおこなった。そして根拠があるもの、もしくは類似効果から同一の効果があると強く推測できるものをまとめている。

 個人差があるものもあり、すべての人が納得して強い効果が出るものばかりではないが、この知識を持っているのと持っていないのでは、アイデア作りに大きな差が出る。この本を活用し自分の足らない部分は補完し、強い部分はより強化してほしい。

ポーポー・ポロダクション

▼書籍「アイデアの科学」の発売を記念して「アイデアの科学」の研究をまとめた特設ページを開設しました。

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